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心理学ワールド 83号 小特集 新しいPTA のあり方と楽しみ方 大塚 玲子(フリーライター・編集者) | 日本心理学会

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Academic year: 2021

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27 小特集 どこへ行く? PTA 保護者の意思」を前提せずに,で きあがっているからだ。「全員必 ず参加すること」,つまり「やり たくない人にやらせること」を前 提に,全体から細部までが設定さ れている。  これを変えるためにはまず, PTAへの加入意思を確認する必 要 が あ る だ ろ う。 現 状PTAは 「入る・入らない」という意思確 認をせず,学校の介在,あるいは 学校との一体化によって,保護者 を自動的に会員にしている(且つ 会費も自動的に徴収)。入り口か らこれでは,PTAが「やりたい人 がやるもの」になるはずがない。  しかし,加入届を整備して,加 入意思の確認さえすれば問題が解 決するかというと,そう単純でも ない。ここで必ず出てくるのが, 「非会員家庭の子どもの扱いをどう するか」という話だ。いまのPTA は「保護者は全員必ず入る」とい う前提なので,非会員が現れたと きに対応に迷い混乱しやすい。  非会員家庭と会員家庭の扱いに 差をつければ,子どもに不利益が 及ぶことを恐れて,誰も非会員を 選べなくなるので,強制加入と変 わらない状態になってしまう。そ こで,非会員家庭と会員家庭の子 どもを同じ扱いにすると今度は, これまでの全員加入を絶対視する 保護者から「ズルい」という声が あがってくる。そこをどうする か,ということについて,会員保 護者のなかでコンセンサスを作る 作業が出てくるのだ(筆者として は,PTAは会員・非会員家庭の 子どもの扱いを変えないのが当然 だと考えている)。  また,せっかく加入届を整備し たとしても,加入した先で活動へ の参加を強制していたら,当然の こと退会者や非加入者が増え,会 員はどんどん減ってしまう。それ をできるだけ防ぐためには,委員 会制や当番制,ポイント制など, これまでの強制的な活動をやめ, 「手を挙げた人(やりたい人)が やる」という本当のボランティア 方式に変える必要も出てくる。  つまり,加入届を整備すると同 時に,PTAの仕組み全体を「や りたい人がやる」ものに変えてい く必要も生じてくる。だから手間 がかかるのだ。 変えた実例もある  といっても,変えられないわけ ではない。簡単ではないながら, PTAを保護者の意思にもとづく 活動に変えた,あるいは変えよう としているPTAも,最近は増え ている。   た と え ばPTA改 革 の 成 功 例 としてよく知られる,東京都大 田 区 立 嶺 町 小 学 校PTO。5年 前 にPTAをいったん解散し,PTO (学校応援団)を立ち上げた。加 入するのも,活動に参加するの  これからPTAは,どうなって いくとよいのか。保護者たちが望 むのは,簡単に言うと,「参加者 の意思を尊重する団体になるこ と」ではないかと思う。  PTAに加入するのも,活動に 参加するのも,会費を納めるの も,個々の会員の意思に基づくこ と。「やりたくない人にやらせる」 のではなく,逆に「手を挙げた人 が,裏で排除される」こともなく, 純粋に「やりたい人がやる」とい う,いわゆる「ふつうの団体」に なること(PTAと自治会以外の 団体は,みんなそうなのだが)。  そして活動の内容についても, 参加する保護者会員の声を取り入 れて運営するようになること。こ れまでのように「去年やったこと をそのままやる」ことが最優先さ れるのでなく,そのときそのとき の会員保護者のアイデアや意見 が,活動に反映されること。  もしPTAがそんな団体になれた ら,いま起きているトラブルの多 くは解決するだろうし(新しい悩 みも生まれるかもしれないが),ま た楽しいものにもなり得るだろう。 なぜ変えるのが大変か  では,PTAをそういった「参 加者の意思を尊重する」もの, 「やりたい人がやる」ものに変え るには,どうすればいいか?  意外と簡単なことではない。と いうのは,いまのPTAは「会員

新しい PTA のあり方と楽しみ方

フリーライター・編集者

大塚玲子

(おおつか れいこ) Profile─大塚玲子 1994年,東京女子大学文理学部社会学科卒業。出版社や編集プロダクション勤務を 経て現職。著書は『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です,わたし たち』他。共著は『子どもの人権をまもるために』『ブラック校則』。

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28 数々の成功例・失敗例を思い返す と,ポイントは二つあるように思 う。一つは「合意形成の努力をす ること」,もう一つは「嫌われる 勇気をもつこと」だ。  まず,合意形成の努力。会員全 体からオープンに意見を募集し, 話し合って意見をとりまとめるこ と。これは民主的な社会において 当然やるべきことだが,PTA,あ るいは日本人は,これを避けがち だ。アンケートや話し合いなど, 合意形成は手間や時間がかかるの で避けたいし,そもそも意見対立 が予想される場面を回避したがる。  しかしやはり,ここの努力をス キップしてしまうと,あとでひず みが出る。もし会長や一部役員の 判断で改革を押し切れたとして も,反対派の不満や怨念が燻り続 け,変えた側も嫌な思いをしがち だ。なかには会長が替わった途端 に反動が来て,元の仕組みに逆戻 りさせられてしまうこともある。  そういったことも考えると,面 倒ではあっても,やはりある程度 の労力を割いて合意形成の努力を することは必須だろう。  そしてある程度,合意形成の努 力をしたあとは,「嫌われる勇気」 も必要だ。不平が聞こえきても気 にせず,割り切ること。もしオー プンに意見を募集しても誰も意見 を言ってこなかったような場合, あとから不満が聞こえてきても気 にする必要はない。  PTA,あるいは日本人は,この 二つのポイントが,どちらも苦手 だ。だから,なかなか変わらない のではないか。先日話を聞かせて もらったPTA会長の友人も,改 革を試みてはいるものの,周囲か ら好き勝手言われることに疲れ 切っていた。「もうこれ以上,嫌 われたくない……」,呻きのような 友人の言葉が,耳に残っている。 も,保護者の任意だ。実際の活動 は,一般のボランティア組織のよ うに,活動ごとに参加者を募るス タイルで(委員会制ではない), 「やりたい人がやる」形を実現し ている。改革にあたっては,保護 者のなかで何度も話し合ってきた ため,みなその意図をよく理解し ている。そのため当時から会長が 二度代わった現在も,「やりたい 人がやる」形をキープしている。  全国的にも,改善や改革を試 みるPTAは増えている。嶺町小 PTOほどの大改革はできなくて も,いまのPTAのあり方を見直 して,辛い思いをする保護者を減 らそうと考える保護者,役員は, いま決して少なくないと感じる。 反対勢力の存在  ただもちろん,うまくいくケー スばかりではない。これまでた くさんの会長・役員,及びその 経験者たちに話を聞いてきたが, PTAを改善・改革できるかどう か,またどこまでそれを実現でき るかは,環境条件で決まってくる。  環境条件というのは,つまり反 対勢力の存在だ。まずよくあるの が,校長が反対するケース。これ は手ごわい。校長が徹底した「こ となかれ主義」の場合,改善・改 革はまず不可能だ。そういう校長 がいる場合には,基本的に転任を 待つしかない(校長が反対する理 由についてはここでは省略する)。  それから,役員のOB・OG,ま たは現役保護者のなかのPTA役 員経験者が反対するケースも多 い。要は,これまでのPTAのや り方になじみ,順応してきた人た ちだ。この人たちの反対も,大変 大きな障壁となる。校長のなかに は,この人たちの顔色をうかがっ て,反対にまわる人もいる。  彼女・彼らは,なぜPTAの改 善や改革に反対するのか? その 理由には,いくつかのパタンがあ るように思う。 ①これまでのやり方を変える,と 言われると,自分がやってきたこ とを否定されたように感じてしま うパタン。なかには,自分自身を 否定されたと捉えてしまう人もい る。PTAで活動してきたことに 誇りを感じ,PTAに一体感を抱 いている人たちだろう。 ②変わることそのものに不安を抱 く人たちも,一定数いると考えら れる。なぜ,どのように変える か,といったことは,この人たち には関係ない。とにかくこれまで のやり方が変わることを恐れ,嫌 がるパタンもある。 ③「自分も我慢してやってきたん だから,他の人も我慢すべきだ」 と考えるパタン。これがいま最も 多く,且つ難しいように思う。「こ れまでは『全員必ずやる』という ルールのもと,私だってやりたく ないのにやってきたんだから,『や りたい人がやる』形に変えるなん て,いまさらズルい」と感じるの だ。①とやや近いが,自分がやっ てきたことへの否定というより, 「ほかの人が自分よりラクをする のが許せない」という感覚だ。  なお,上記の①や②は本人の性 格による部分が大きいかもしれな いが,③に関してはそのPTAの 状況も大きく影響しそうだ。いま 現在「やりたくない人にやらせる」 力が強く働いているPTAの会員 ほど,「自分も我慢したのだから, ほかの人も我慢すべきだ」と感じ る傾向が強くなるように思う。 丁寧な議論と嫌われる勇気  変えることに反対する人は,い つの時代も,どこのPTAにもいる。 強弱はあるにせよ,ゼロというこ とはないだろう。それをどうやっ て乗り越えていけばいいのか。  これまで聞かせてもらってきた

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